What’s
Community design?
コミュニティデザインとは?
私たちが考えるコミュニティデザインとは、デザインの力を使って、コミュニティが持つ課題解決力を高めるよう支援することです。
人がつながるしくみをつくる
私たちは公共分野のデザインに携わっています。すべてのプロジェクトに共通するのは住民参加で進めるという点です。
都市部はもちろんのこと、最近では中山間離島地域でも人と人とのつながりが希薄になったと言われています。住民同士がつながり、自分たちの地域における公共的な課題を解決するよう動き出し、デザインについて正しく理解し、地域をよくしていくことが求められる時代だといえます。
「これからの日本社会に対してデザインは何ができるだろうか」。そのことを考えながら活動しているうちに、参加型のデザイン、つながりのデザインにたどり着きました。今後もそれぞれの時代に必要とされるデザインのあり方を模索し続けたいと思っています。
コミュニティデザインをもっと知りたい方へ
studio-Lの書籍
「見えない」デザイン、
「見える」デザイン
コミュニティデザインは人がつながる仕組み作りや担い手育成などの「見えないデザイン」から、その中で生じたプロセスや成果を見える化する「見えるデザイン」まで多岐に渡ります。様々なデザイン的手法を使い、食、農、自然、福祉、観光、アート、教育、環境、エネルギー、医療、防災などの分野に取り組んでいます。
コミュニティデザインでは、1、リサーチ 2ワークショッップ 3チームビルディング 4サポートというプロセスがありますが、地域や分野などにより、プロジェクト1つずつオリジナルのプロセスを設計して実践しています。
プロジェクトを通して
心がけている8つのこと
01
公共のデザインを従前よりもうつくしくすること
02
地域住民がプロジェクトに参加するきっかけをつくること
03
参加した住民がデザインについて学ぶこと
04
デザインについて学んだ住民が周囲にそれを語りやすくすること
05
参加した住民同士のつながりを形成すること
06
つながった住民たちが市民活動を開始すること
07
関わった住民たちが互いの生活を楽しいものにしたり、支え合ったりすること
08
以上のような「参加のデザイン」の大切さを広めること
コミュニティデザイナー
という仕事
コミュニティデザイナーとは、ファシリテーション力とデザイン力に担保された課題発見能力と課題解決能力を備えた人材で、人が持つ力を引き出し、人と人とをつなぎ、その人たちの力で課題を解決できるコミュニティを支援する存在です。
ランドスケープ・建築・インテリアなどの空間デザイン、ワークショップやイベントの企画運営、グラフィックデザイン、WEB制作、出版物編集といった複合的な分野のスキルを持ったメンバーで構成されています。
studio-Lのなりたち
きっかけ
studio-Lの代表である山崎亮は、設計事務所に勤め建築やランドスケープのデザインの仕事にかかわっていました。あるとき、公園に来てもらうためのプログラムを公園自ら考えて運営していく仕組みをつくる、有馬富士公園のパークマネジメントの仕事にかかわるようになります。それは、建築や公園という「ハード」の物理的なデザインを変えることよりも、その場所を利用し自ら運営するコミュニティ=「ソフト」のマネジメントをしていく仕事でした。人のつながりが失われていく社会状況のなかで、コミュニティがもつ力こそ、状況を変えていく鍵なのではないかと感じるようになります。
はじまり
設計事務所の仕事とは別に、チューターとして参加したワークショップで、山崎は、studio-Lの立ち上げメンバーとなる醍醐孝典、神庭慎次、西上ありさと出会います。「生活スタジオ」というチームを組織して、活動を継続的に行ううち、信頼できる仲間と楽しみながら活動するコミュニティを生み出すことができれば、まちを少しずつ変えることができる。そう実感した山崎は、自らの事務所studio-Lを立ち上げます。そこへ先の3人が合流し、まちの担い手となるコミュニティをデザインするような仕事を展開していこうと決めました。2005年のことでした。
発見
同じ年、大阪府の公園を維持管理している協会発行の冊子をリニューアルするプロジェクトに、企画と編集でかかわることになりました。新しい雑誌『OSOTO』では、公園自体よりも屋外空間全般をテーマとし、公園へ来る人を増やすためにも、まずは屋外へと一歩踏み出すきっかけづくりがなされました。日常の風景は、生活する人たちが外で活動する行為の積み重ねでできあがります。『OSOTO』は、「ソフト」である人びとの行動をマネジメントすることによって風景をデザインする、そんな試みでした。また、千葉リハビリテーション病院のプロジェクトで、信頼できるデザイナーと協働するうち、山崎は「モノをデザインしないデザイナー」の役割をはっきり感じ始めます。
実践
学生だった西上が卒業研究で通い始めたのをきっかけにまちづくりへ関わることになった、兵庫県姫路沖の離島、家島の「採られる島」プロジェクトや、島根県海士町の総合振興計画づくりは、息の長いプロジェクトとなりました。その土地に暮らす人びとへのヒアリングやワークショップを通じて、彼らと信頼関係をつくり、住民参加で計画を立てることで、まちづくりの担い手となるコミュニティが生み出すこと。100万人の人が1度だけ訪れる島ではなく、1万人の人が100回訪れたくなるような島にする仕組みをつくること。まちづくりにおいて重要なことは、時間をかけてじわじわと進めることで、そのプロセスこそが、住民に主体性を取り戻させるのです。
展開
時には、反対する住民との対話の糸口を探らなければならない難しいワークショップもあります。意見が激しく対立して、目の前の相手とのつながりを直接つくり出しづらいときにはどうするか?その場合は、学生チームを地域に派遣したり、彼らと地域とのつながりを構築するところから、徐々にそのつながりを広げていきます。また、反対意見の住民にとって、話し合えるテーマが何かを見つけることも重要です。困っていることや、やってみたいことを住民から聞き出し、専門家への橋渡しをすること。これもコミュニティデザインの大切な仕事です。そのほかに、民間企業とまちとコミュニティを結びつけるプロジェクトもあります。鹿児島にあるデパートのプロジェクトでは、市民が自由に活動できる場をデパートの中につくり出し、新しい公共の担い手として、企業がまちと支え合える関係づくりに取り組みました。
いま、そしてこれから
studio-Lがスタートしてから時は経ち、社会はいろいろと変化を経験してきました。今、多くの人びとが、「人と人とのつながり」の大切さに気づき始めています。そしてその人たちが、新たな結びつきを通じて、自分たちの力で課題を解決しようと動き出しています。これこそが、studio-Lが考える「コミュニティデザイン」です。私たちの最終的な目標は、自分たちの仕事が社会的に必要なくなること。病気がなくなって、お医者さんがいらなくなるように、もめごとがなくなって、弁護士の仕事が必要なくなるように、コミュニティデザイナーがいなくても、人々が自らの力で人生を切り開く社会です。いつか、そんな日がくることを願って、私たちは日々「コミュニティデザイン」に取り組んでいます。